
化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)を巡る冤罪(えんざい)事件で、警視庁は7日、公安部長ら幹部への報告が形骸化し、実質的な捜査指揮が不存在だったとする検証報告書を公表した。
報告書は公安部幹部について、「適切な報告がなくとも慎重に判断すべき立場にあり、その責任を免れない」と批判。公安部長が取り仕切る「部長捜査会議」を導入するなどして幹部の関与を強める再発防止策も明らかにした。
検証結果を受け、迫田裕治警視総監は記者会見を開いて謝罪した。警視庁トップの警視総監が会見で謝罪するのは異例。
当時、公安部で何が起きていたのか。検証報告書を基に再現した。
捜査を担当したのは外事1課5係。平成に入ってからの摘発件数は8件にとどまっていた。大川原の捜査を始めたのは2017年5月ごろ。「担当事件で成果を上げる」と前のめりになっていた宮園勇人係長と、外事1課ナンバー2の渡辺誠管理官が現場の捜査指揮を執った。渡辺管理官は巡査部長時代から通算11年、宮園係長は同じく通算8年ほど外事1課の勤務経験があり、不正輸出事件の「エキスパート」とされた。
この2人が中心となり、輸出規制ルールを定めた経済産業省令の拡大解釈が行われる。国際ルールに従えば問題のない大川原の装置輸出を立件しようとしたのだ。ただ、経産省が省令解釈を容認しないと立件はできない。17年10月から経産省と協議を重ねたが、色よい返事はなかった。このことは、2代にわたる外事1課長や、新美恭生公安部長ら「4役」にも報告された。
伏せられた「都合の悪い話」
しかし、ここで捜査に…
Comments