米国の核開発、根底にある差別意識とは 石山徳子・明治大教授

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明治大の石山徳子教授=本人提供
明治大の石山徳子教授=本人提供

 米西部ニューメキシコ州で人類初の核実験が行われてから今年で80年となった。「『犠牲区域』のアメリカ 核開発と先住民族」(岩波書店)などの著書がある石山徳子・明治大教授(人文地理学)に米国の核開発の根底にある差別意識について聞いた。

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 軍事目的から始まった米国の核開発の歴史は、社会的に弱い立場にある人びとや、価値が低いとみなされる土地を踏みつけて発展した。問題の根底には「セトラー・コロニアリズム」(入植者植民地主義)がある。すなわち、先住民族の土地を奪い、新たな国家を築いた米国の成り立ちが、核をめぐる不正義と密接につながってきた。

 国家の安全保障や戦争が絡むと、福祉を犠牲にすることが「やむを得ない」と正当化されがちだ。ウラン開発から廃棄物処分に至る核開発のそれぞれの段階、場所で最前線に置かれた人びとが、国の論理の中で見えない存在に追いやられてきた。

 例えば、冷戦期に多くの大気圏内核実験が行われた米西部ネバダ州の実験場は「クレーター」だらけだ。かつて先住民族の人びとが暮らした場所が壊され、文化が軽んじられ、心や体が傷つけられた。核問題についてのさまざまな議論の中でも多くの場合、そのような視点は抜け落ちてきた。

 政策決定に自ら関わったトリニティ実験の風下住民の闘いは、押しつぶされてきたものを回復するプロセスであり、その意味では「脱植民地化」と言い表すことができるかもしれない。

 差別と抑圧のシステムによる不正義は、日本の公害などを含む多くの環境問題に共通する構図だ。人種、民族、社会経済的な状況など、さまざまな側面から周縁化されてきた人々の声に耳を傾けることで、それぞれの問題が実はつながっていることが見えてくる。【聞き手・八田浩輔】

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