
建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み健康被害を受けたとして、首都圏の元建設作業員や遺族ら約500人が、建材メーカーに損害賠償を求めた2件の訴訟は7日、東京高裁で原告約440人とメーカー17社の間で和解が成立した。メーカーの賠償責任の範囲が争点だったが、被災当時の建材の市場シェア10%以上などの7社が400人に謝罪し計52億円超の解決金を支払う内容。残りの10社は弔意とお見舞いの意を示す。原告側が明らかにした。
最大規模の和解に
メーカー責任を問うた建設アスベスト訴訟で最大規模の和解となり、企業の責任を幅広く認める形となった。他に1000人程度が同種訴訟を起こしており、今後も大阪高裁、東京、さいたま両地裁などで同様の枠組みで和解が進む見通し。
この日和解が成立したのは、2008年に提訴し、21年5月に最高裁が審理を差し戻した東京訴訟1陣の約330人と、14年に提訴した2陣の約110人。
アスベストが原因で中皮腫や肺がんが発症するまでには数十年かかる。作業員は多くの現場を渡り歩いていたため、どのメーカーの建材から飛散したアスベストが原因なのか特定が難しいという特徴がある。
一定の市場シェアを持つメーカーの建材は作業員が触れた可能性が高く、過去にはシェア10%や20%を賠償責任の基準とする司法判断もあった。21年の最高裁判決は複数の建材が被害の原因になった可能性が高ければ、製造した各メーカーが連帯責任を負うとの考え方は示したものの、基準となる具体的なシェアの数値は示さなかった。
このため差し戻し審では、シェアの数値設定が主な争点となった。東京高裁は24年12月と25年1月、1陣訴訟と2陣訴訟でそれぞれ20%よりも多くのメーカーが対象となる10%以上を和解案として打診。エーアンドエーマテリアル(東京都港区)、ニチアス(東京都中央区)など7社が受け入れた。
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