自己検証に限界の「大川原冤罪」報告書 実効性ある再発防止策を

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記者会見で謝罪する迫田裕治警視総監=東京都千代田区で2025年8月7日午前10時33分、新宮巳美撮影 拡大
記者会見で謝罪する迫田裕治警視総監=東京都千代田区で2025年8月7日午前10時33分、新宮巳美撮影

 化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)を巡る冤罪(えんざい)事件で、警視庁は7日、公安部長ら幹部への報告が形骸化し、実質的な捜査指揮が不存在だったとする検証報告書を公表した。

冤罪の体質消えず

検証で確認された主な問題点 拡大
検証で確認された主な問題点

 大川原化工機の冤罪(えんざい)事件に対する警視庁の検証結果は、原因を組織の機能不全と結論付けた。捜査機関が暴走すれば一般市民にあらがうすべはない。にもかかわらず総括には背筋が寒くなる内容が並ぶ。冤罪をなくすにはどうすればいいのか。自己検証に基づく「再発防止」「真摯(しんし)な反省」では限界がある。

 検証結果は、警視庁公安部で捜査を主導した外事1課5係長が公安上層部や担当検事と立件に不利な消極要素を共有しなかったとした。公安が密行性が高い部門だとしても、容疑者の反論に耳を傾け、消極証拠に向き合うことは捜査の「イロハ」だ。言い訳にもならない。

 公安上層部や担当検事は5係長の報告を厳しくチェックせず、警視庁は「捜査指揮の不存在」、最高検は「消極証拠の確認不足」とした。人を容疑者、被告の立場に置くことができる権力組織として信じがたい不作為だ。警視庁は最も重くて退職した5係長らの「減給」の懲戒処分相当、検察に至っては処分ゼロと一般感覚と乖離(かいり)する。

 消極証拠を隠し、逮捕や有罪獲得を優先する。過去の数々の冤罪事件が示した構図だ。今回起訴は取り消されたものの、体質が簡単に消えないことを証明した。折しも国会や法制審議会で再審法制の見直し議論が本格化している。実効性のある再発防止のため、客観的な検証機関の設置や関与者の適正な処分のあり方を併せて議論する必要がある。【島田信幸】

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