丹下健三設計の「船の体育館」に県「解体先延ばしできず」 香川

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旧香川県立体育館再生委員会の提案に対し、香川県教委が「解体手続きは先延ばしできない」とした旧県立体育館。つり屋根構造で、独特の外観から「船の体育館」と呼ばれている=高松市で2025年7月4日午後1時31分、森田真潮撮影 拡大
旧香川県立体育館再生委員会の提案に対し、香川県教委が「解体手続きは先延ばしできない」とした旧県立体育館。つり屋根構造で、独特の外観から「船の体育館」と呼ばれている=高松市で2025年7月4日午後1時31分、森田真潮撮影

 世界的な建築家の丹下健三が設計を手がけたつり屋根構造の建築で、香川県や同県教委が解体方針を示している旧香川県立体育館(高松市)について、7月に建築家らの民間有志団体「旧香川県立体育館再生委員会」(長田慶太委員長)が公費負担なく耐震改修後にホテル事業などに活用する案を提出したのに対して、県教委は6日、「解体の手続きは先延ばしできない」とする内容の回答を文書で送付したと発表した。

 文書は5日付で「香川県としては、旧県立体育館の老朽化及び耐震性がないことから、できるだけ早く安全を確保するため、解体の準備・手続きを進め、現在に至っております」とこれまでの経過を説明したうえで「(再生委員会の)提案においても、旧県立体育館を所有し活用する具体的な主体や計画等は明確になっておらず、先延ばしはできないと考えております」などとしている。

 旧県立体育館は、和船を思わせる独特の造形から「船の体育館」とも呼ばれ、ケーブルで屋根をつり下げる「つり屋根構造」で柱のない大空間を実現している。タイプは異なるが、同年に完成した同じく丹下建築の代々木競技場(東京都渋谷区)=国重要文化財=と共に、日本最初期のつり屋根構造の建造物だが、2014年に耐震改修工事の入札が不調に終わり閉館した。

 21年には県教委が「サウンディング型市場調査」で民間事業者から活用・改修案を集めたが、県の財政支援なしでは運営が難しいと判断して採用には至らなかった。県と県教委は23年に解体方針を表明。25年3月には解体工事費約10億円を盛り込んだ予算案が県議会で可決された。

 一方、7月に再生委員会が「解体という判断の前提条件が変わった」として再検討の協議に応じるよう県側に求め、近代建築史に詳しい松隈洋・神奈川大教授も「活用しながら重要文化財に指定されることも十分に考えられる。県はぜひ提案を尊重して、慎重に検討する時間をつくってほしい」と求めていた。【森田真潮】

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