
化学機械メーカー「大川原化工機」を巡る冤罪(えんざい)事件で、警視庁が7日に検証報告書を公表したことを受け、捜査に携わったある捜査員が毎日新聞に手記を寄せた。全文は次の通り。【遠藤浩二】
<手記の主な内容>
・組織名の意味、ないがしろ
・「芯から腐敗」自ら証明
・事件の肝、解明されず
公表された検証報告書を一言で言えば、初代大警視(現在の警視総監に当たる官職)の理念、そして、組織名称でもある警視庁の理念に完全に反している。
腹立たしさを通り越して、情けない限りである。
東京高裁判決で指摘されなかった悪行を、自ら検証するチームではなかったのか。
警視庁を創設した川路利良(かわじとしよし)初代大警視が残した言葉に「声なきに聞き、形なきに見る」がある。
「警察官たるものは、声なき声に耳を傾け、表面的、外形的な現象のみにとらわれることなく、奥に隠されたものを見逃すことなく、真実を暴き出すことが必要である」という意味だ。
「芯から腐敗」自ら証明
この初代大警視の理念は、警視庁の名前の由来でもあると警察学校で教わった。警視庁の「視」は「みる」。「庁」の俗字は「廰」で、「きく」という意味が込められているそうだ。
警視庁創立から昨年で150年が経過した今、検証報告書の内容は、組織が芯から腐っていることを自ら証明してしまった。
恥ずかしくないのだろうか。警視庁の名称を「軽視庁」にした方がいいだろう。
高裁判決よりも後退
検証報告書の冒頭には「警視庁として、控訴審判決は第1審判決に比べて更に厳しい判断が示された上で本件の逮捕等が違法であるとされたことを真摯(しんし)に受け止め、本報告書をとりまとめるに当たっては、同判決で指摘された事項を踏まえて、改めて事実関係の精査に当たった」と記されている。
ところが、報告書の内容は、高裁判決の指摘より、はるかに後退している。
捜査に疑問を抱く捜査員たちから追加捜査の意見具申があったことなど都合の悪いこ…
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