
コメの平均価格はピーク時より下がってきているものの、スーパーの銘柄米の販売価格は1キロ1000円ほどの地域もある。一方、国産の「押し麦」や「もち麦」は、その半値以下で手に入るため、ご飯に混ぜるなど人気が上昇している。なぜ麦はお手ごろ価格を維持できているのか。
「ゲタ」で黒字に
福岡、佐賀両県にまたがる筑紫平野では5月下旬、黄金色の麦畑が風に揺れていた。九州最大の穀倉地帯で、コメと麦の二毛作が盛んだ。昨秋の稲刈り後に植えた小麦や大麦が5~6月に実り、麦を刈り取った後の6月に田植えをした。
約30ヘクタールを耕す佐賀県内の農家の50代女性は、刈り取った麦を農協(JA)に出荷している。販売額は手数料を引かれると60キロ当たり千数百円で、高騰前でも1万数千円だったコメとは、比べものにならないほど少ない。女性は「微々たるものだけど、それでも麦は『ゲタ』があるので、従業員の給料や諸経費を差し引いても黒字になる」と語る。
ゲタとは、「ゲタ対策」と呼ばれる農家への交付金のことだ。農林水産省が進める農家の経営所得安定対策のひとつで、水田で麦を作った場合、作柄や品種に応じて50キロ当たり3000~8000円程度を支払う。大豆やソバなども対象で、2007年に基になる制度が始まった。
例えば、地区ごとの入札で決まる麦の販売価格で、佐賀県の二条大麦は1トン約5万円。100トンの収穫があれば価格は500万円で、ここからJAなどへの手数料が引かれる。一方、二条大麦の「ゲタ」の平均額は、50キロ当たり5000円程度。単純計算で100トンの収穫に約1000万円が交付される。
また、都道府県や市町村によっては独自の交付金制度があり、例えば小麦の生産量全国2位の福岡県は、ラーメン用などの麦の生産を奨励しており、10アール当たり最大7000円の補助が出る。
コメの消費は長らく右肩下がりの状態が続き、稲作だけでは経営が困難な農家をどう支えていくべきか――。麦を巡る政府の支援策の背景には、…
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