パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘を巡り、イスラエル首相府は8日、最大都市ガザ市を制圧する計画を治安閣議で承認したと発表した。議題に上っていた「ガザの完全占領」については明言しなかったが、米ニュースサイト「アクシオス」は、この計画がガザ全域の占領に向けた戦闘拡大の「第1段階」にあたる可能性があると報じている。
イスラエル軍はすでにガザ地区の75%を制圧している。北部のガザ市から約100万人の住民を中部などへ強制避難させたうえで、大規模な地上作戦を展開する方針とされる。人質を拘束するイスラム組織ハマスに圧力をかける狙いがあるとみられるが、戦闘が拡大すれば人道危機は一段と深刻化し、民間人の犠牲が増えるのは必至だ。
イスラエル紙ハーレツによると、住民の強制避難は10月上旬までに完了する見込みで、今回の決定にはガザ中部の難民キャンプの制圧は含まれない。ガザ全域への戦闘拡大は人質の命を危険にさらすとして、軍のザミール参謀総長が反対しており、計画が一時的に後退した可能性もある。
治安閣議では、ハマスとの戦争終結に向けた5項目の条件も採択。ハマスの武装解除▽人質の解放▽ガザの非軍事化▽イスラエルによるガザの治安管理▽ハマスでもパレスチナ自治政府でもない文民統治機構の設立――を盛り込んだ。
閣議に先立ち、ネタニヤフ首相は米FOXニュースのインタビューで、イスラエル軍の支配をガザ全域に広げる意向を示す一方、「ガザを統治するつもりはなく、アラブ勢力に管理を引き渡したい」と語った。
ネタニヤフ氏の発言に対し、ハマスは声明で「人質を犠牲にしようとしている」と反発し、抵抗を継続すると主張した。
ガザ保健当局によると、2023年10月の戦闘開始以来、ガザ側の死者は6万1000人を超え、飢餓による死者は約200人に上っている。一方、いまだ50人のイスラエル人がハマスに拘束され、このうち20人が生存しているとみられる。【エルサレム松岡大地】
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