高校野球・夏の甲子園1回戦(8日)
○横浜(神奈川)5―0敦賀気比(福井)●
エースが魅する場所はマウンドとは限らない。横浜の背番号「1」を付ける奥村頼人は、左翼守備からの好返球でチームを救った。
試合途中から強まった雨で、四回の横浜の攻撃中に67分間、試合が中断した。5―0となって迎えた五回の守備は、グラウンドコンディションの悪さも重なり、失策や四球などで1死満塁のピンチとなった。
反撃に向けてボルテージが上がる三塁側の敦賀気比のスタンドを横目に奥村は冷静だった。
マウンドの織田翔希は速球派右腕。「左打者なので、織田の球に振り遅れれば絶対に打球は来る」と考えた。
予感は的中する。
定位置より浅めの位置に落ちそうな飛球をチャージしながら捕球すると、素早く本塁に送球。最速146キロ左腕でもある奥村の送球は本塁手前でワンバウンドして捕手のミットへ。
歓声が上がったのは横浜スタンドだった。結果は補殺のダブルプレー。ピンチを脱し、試合の流れを渡さなかった。
1998年以来、27年ぶりの春夏連覇に向け、村田浩明監督が重視するのは「準備力」だ。奥村は今夏、神奈川大会では投手としての出場は後輩の織田に譲ることが多かったが、「できることをやる」と与えられた場所で役割を果たす準備をしている。「村田野球」を体現し、大事な初戦を勝ちきった。【高橋広之】
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