第107回全国高校野球選手権大会は第4日の8日、1回戦があり、滋賀県代表の綾羽(あやは)が春夏通じて初めて甲子園に登場する。
琵琶湖の南端付近に位置する草津市にある男女共学の私立校。今年で創立60年を迎えたメモリアルイヤーに花を添えた綾羽は、どんな学校なのだろうか。
開校は紡績工場の人材確保の側面も
1965(昭和40)年に綾羽紡績の草津工場内に創立された。
中学を卒業して入社した従業員が働きながら高校の卒業資格を取得するために開校されたが、若手の人材を確保する側面もあったという。
その後は工場で勤務する従業員以外も受け入れるようになり、学校の規模は次第に拡大していった。
現在は全日制、昼間定時制、通信制の三つの課程を設けて、幅広い学びの場を提供する。
学科・コースも多彩だ。パティシエや調理師、美容師を目指す生徒が専門知識を得て、資格を取得できるようなカリキュラムが組まれている。
マエケンから本塁打
野球部は99年創部で2004年から指定強化クラブとなり、滋賀・近江高を初めて甲子園に導いた故田中鉄也さんを監督として招へいした。
現在の千代純平監督(36)は強化部となっての1期生で、早くも翌年には頭角を現した。
05年秋に初めて近畿大会に出場。1回戦で、後にプロ野球や米大リーグでプレーする前田健太投手を擁する大阪・PL学園に敗れはしたが、チームは前田投手から2本塁打を放ち、存在感を示した。
滑り出しは順調だったが、甲子園への道のりは険しかった。県大会の上位常連校となったが、あと一歩のところで何度も涙をのんできた。
夏の滋賀大会は昨夏までに3度にわたって決勝ではね返されてきた。
チームは「甲子園出場」を目標としていたが、選手側からの提案で、21年春に初めて県大会を制してからは「甲子園で1勝」に変更した。より高い目標に設定することで、壁を乗り越えようとした。
練習試合では、宮城・仙台育英や東京・日大三など甲子園で優勝経験もある強豪に胸を借りて、力をつけてきた。
今夏の滋賀大会決勝は昨年の決勝と同じく滋賀学園が相手だった。
一回に2点を奪われ、昨年と同じく追いかける展開となったが、その裏の攻撃で逆転して流れを引き寄せた。6―3で宿敵を振り切り、悲願の甲子園出場を決めた。
現在の部員は女子マネジャー3人を含めて55人。全員が全日制で、自宅から通う地元出身者がほとんど。
グラウンドは学校から6キロほど離れた両翼98メートルの野球部専用。平日は授業が終わった夕方から約2時間半練習をする。
千代監督は甲子園出場を決めた後、「選手はよく頑張った。だが、それだけでは突破できなかった。卒業生が積み上げてきたものがあって、扉を最後開くことができた」と感慨深げに語った。
だが、まだ志半ばだ。目標に掲げる聖地での勝利に向け、勝負の時を迎える。【村上正】
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