(山と溪谷社・1980円)
76種が教えてくれる不思議
今は夏休み。ちょっと寛(くつろ)いだ気分で読めるものをと思って選んだ一冊だ。著者は、植物の葉がどのようにしてできるかを、遺伝子のはたらきを通して解明する第一線の研究者である。と同時に、熱帯雨林から道端の草まで、すべてを観察する植物探検家でもある。「子どもの頃からそのめくるめく多様性に惹(ひ)かれて、植物の世界に入ってきた」という著者が、花の咲く植物から76種、「葉から花、実、茎、はては根まで、いろいろ特徴的な種類を選んで紹介」している。
第一話の題は「どっちもどっち」。コアラの食べるユーカリの葉は、等面葉(とうめんよう)、つまり表と裏が同じなのだ。確かに身近な葉は、どれも表と裏が違うが、そもそもなぜ区別があるのだろう。葉の重要な役割である光合成のために、表には緑の色素が並び、濃い色になる。裏は色が薄く、二酸化炭素や酸素が通りやすいよう、空隙(くうげき)が多い。空隙は、水を逃がして葉の温度を下げる役割もする。
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