(講談社現代新書・990円)
剥奪感もつ人々の声にならぬ声潜む
2025年夏の参議院選挙では、「日本人ファースト」というキャッチコピーを掲げた参政党の躍進が注目を集めた。「国際金融資本家」が政治に影響を及ぼしているといった主張に象徴されるように、同党の言説はしばしば陰謀論的であると指摘されてきた。こうした陰謀論的主張を掲げる政党が一定の支持を得るようになった現在の状況を、私たちはどのように理解すればよいのか。
陰謀論とは、「出来事の原因を誰かの陰謀であると不確かな根拠をもとに決めつける考え方」のことを指すと本書にはある。SNSでは、「あんな陰謀論を信じるなんて」というように、参政党支持者を揶揄(やゆ)する声が多く見られた。しかし、本書のタイトルには、陰謀論は私たちのすぐ「となり」にあるというメッセージを込めている。陰謀論にハマる人々は特別ではない。私たちの多くが陰謀論から影響を受けているという事実を出…
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