蔵屋美香・選 『地図のない道』=須賀敦子・著

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 (新潮文庫 473円)

 30代前半だった。学芸員になってまだ数年の私は、張り切っていた。初めてヴェネツィアに行くのだ。イタリア美術の名品と、世界的な現代アートの祭典、ヴェネツィア・ビエンナーレを見るのだ。

 買い込んだ本の一冊に須賀のエッセー「ザッテレの河岸で」が載っていた。「ドルソドゥーロ」に「なおる見込みのない人たちの水路」。奇妙な地名ばかりで冬のヴェネツィアがつづられていた。

 何年か後、このエッセーと「地図のない道」の2作を収録した文庫本を買い直した。どちらもヴェネツィアが重要な舞台だ。

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