
夏の甲子園に35年ぶり2回目の出場を果たした青藍泰斗(栃木)。率いるのは今大会最年少となる27歳の青山尚緯(なおい)監督だ。
寮で選手と寝食を共にし、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で悩み相談も受ける。選手との結びつきを深め、就任からわずか2年で全国大会出場を勝ち取った。
真っ青に白の縦じまという印象的なユニホームで、新風を吹き込もうと「とにかく、あがこう」とナインを鼓舞する。
当初は距離感に悩み

夏の栃木大会決勝。強豪・作新学院を破り、ナインに促された青山監督は宙を舞った。胴上げを終え歓喜の涙を流す選手たちと握手や抱擁を交わし「野球も普段の生活も一生懸命頑張ってきたご褒美の優勝だ」とねぎらった。
群馬県太田市出身。高校時代は桐生市商で主将を務め、3年生の夏は群馬大会3回戦で敗退した。「将来、教え子たちと甲子園を目指そう」と指導者を志した。
進学した地元の関東学園大で、青藍泰斗の卒業生と同期だった縁で同校の教員に。野球部ではコーチ、部長を経て2023年秋に監督に就いた。
初の監督経験では当初、どう指導すれば良いか距離感に悩むこともあった。
だが、10歳ほどの年の差の選手たちと一緒に野球に打ち込むうちに、「監督っぽくなくていい。寄り添い一緒に成長していこう」と肩の力が抜けた。選手目線で、親しみやすい指導者でいようと心掛けている。
寮で共同生活も
グラウンド外でも選手とコミュニケーションを重ねる。気軽に意見を交わせるようラインで悩みを聞き、課題や練習メニューについて個々にアドバイスを送る。

寮の監督者が不在になったため、監督就任と同時期に部員たちが暮らす寮へ移り住んだ。生活指導の傍らで一緒に食事を取り、食堂のテレビで野球観戦をして盛り上がるなど日々の生活を共に楽しむことも忘れない。
ユニホームは真っ青に
昨秋に一新したユニホームも、選手たちと意見を出し合いながら決めた。それまでは白基調だったが、スクールカラーである青を前面に押し出したものに刷新することになり、「唯一無二」を目指して縦じまを入れた。
エースの永井竣也投手(3年)は「何でも相談でき、意見も取り入れてもらえる。練習や寮生活を青山先生(監督)と一緒につくり上げる毎日だった」と振り返る。
こうした寮などでの綿密なコミュニケーションは選手との距離を縮め、指導者としての手腕を磨くことにもつながった。
青山監督は「選手個々の性格や考え方を深く理解できたことで、選手起用や作戦の幅が広がった」と語る。
迎えた今夏の栃木大会では、決勝で延長十回タイブレークの末に作新学院を撃破し、05年に葛生から現在の校名になってから初の甲子園を勝ち取った。

前回出場した1990年大会の山陽(広島)との初戦は九回裏2死走者無しから3点差を逆転された。
この悲劇は部内で語り継がれている。当時の映像を何度も見返したという青山監督は「35年前の忘れ物を選手たちと一緒に取りに行く」と甲子園初勝利を誓う。【池田一生】
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