
茨城県古河市で指された第83期名人戦七番勝負第5局は、第4局に続いて千日手に。指し直し局で永瀬拓矢九段は工夫を凝らした後手戦術で藤井聡太名人を苦しめたものの、藤井名人は王者の胆力と構想力で押し返し、4勝1敗で3連覇を成し遂げた。観戦記を担当した藤本裕行さんは藤井名人の指し回しの見事さを解き明かしつつ、その背中を追い続ける永瀬九段も「諦めない男」とたたえた。
第1譜(1―26)
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7六歩 △3二金 ▲7七角 △3四歩
▲8八銀 △7七角成1▲同 銀 △2二銀
▲4八銀 △3三銀 ▲4六歩 △6二銀
▲7八金 △1四歩 ▲1六歩 △7四歩
▲4七銀 △9四歩2 ▲9六歩 △6四歩
▲3六歩 △6三銀(第1図)
(持ち時間各9時間 消費▲0分△3分)
茨城県初の名人戦
藤井聡太名人の3連勝で始まった今シリーズ。後のない挑戦者の永瀬拓矢九段が第4局を千日手指し直しの末、初勝利をあげた。
その一夜明けての取材ではよくしゃべる永瀬の姿が印象に残った。自分の思ったこと、感じたことを正直に話していたからだ。
舞台は大分県宇佐市から茨城県古河市に移った。対局場のホテル山水に着くと、出迎える地元関係者の中に宮宗紫野女流二段がいた。
宮宗女流二段は唯一の古河市出身棋士で、今回は誘致の段階から準備に携わったという。そして、前夜祭の司会や解説会の聞き手もこなし、大活躍だった。ちなみに、茨城県での名人戦は初めての開催となる。
1日目の午前8時38分、永瀬が対局室に入ってきた。目付きは鋭く、険しい表情をしていた。ぴりぴりとした雰囲気からも、すでに戦闘モードに入っていた。
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