東日本大震災被災 愛梨ちゃんの絵を自販機に 母の故郷、熊本に設置

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かわいらしい魚たちの絵とメッセージでラッピングされた自販機の前面=熊本県氷川町大野の道の駅竜北で2025年8月5日午後0時20分、中村敦茂撮影 拡大
かわいらしい魚たちの絵とメッセージでラッピングされた自販機の前面=熊本県氷川町大野の道の駅竜北で2025年8月5日午後0時20分、中村敦茂撮影

 東日本大震災で犠牲となった幼稚園児が描いた絵をラッピングした飲料の自動販売機が、熊本県氷川町大野の道の駅竜北に設置された。「一番の防災 それは…『忘れないこと』」。絵とともに教訓を伝えるメッセージも添えられ、命の大切さ、備えの大切さを訴えている。【中村敦茂、百武信幸】

 2011年3月11日、宮城県石巻市の佐藤愛梨(あいり)ちゃん(当時6歳)は、幼稚園の送迎バスに乗車中、津波と火災に巻き込まれ亡くなった。

 前年の夏、愛梨ちゃんが取り組んだのが自販機の原画となった作品だ。「想像の海の生きものたち」をテーマにしたコンクール用に、海底を楽しそうに泳ぐ海の仲間たちを描いた。このうち何匹かがハート形をしているのは、「みんなを幸せにするお魚」だからという。

津波で犠牲になった佐藤愛梨ちゃん=佐藤美香さん提供 拡大
津波で犠牲になった佐藤愛梨ちゃん=佐藤美香さん提供

 愛梨ちゃんの母美香さん(50)は、被災現場を案内する語り部活動とともに、防災や命の大切さを伝える「アイリンブループロジェクト」に取り組んできた。収益の一部を防災啓発活動へ寄付するラッピング自販機の設置協力も募っている。

 美香さんは氷川町出身で、実家は今も町内にある。こうした縁もあり、道の駅竜北で物産館を運営する町の第三セクターが自販機の設置を決めた。設置は全国で11カ所目。4日に物産館の脇に据え付けられ、「ハートのお魚ちゃん」たちが、「迷わず高台へ」などと命を守るためのメッセージを町民や来場者らに届け始めた。

 氷川町は7月、南海トラフ巨大地震の防災対策推進地域に追加指定された。推進地域は南海トラフ地震で震度6弱以上の揺れなどが想定され、防災に関する計画策定などが求められる。

佐藤愛梨ちゃんの絵でラッピングされた自販機に見入る来場者ら=熊本県氷川町大野の道の駅竜北で2025年8月5日午後0時12分、中村敦茂撮影 拡大
佐藤愛梨ちゃんの絵でラッピングされた自販機に見入る来場者ら=熊本県氷川町大野の道の駅竜北で2025年8月5日午後0時12分、中村敦茂撮影

 物産館の大川聡志郎館長は「災害を身近に考え、備えを進めていただくきっかけになれば」と啓発効果に期待する。立ち寄った熊本市南区の女性看護師(64)は「長い時間がたつと、大震災のことも忘れがちになってしまう。とてもいい取り組みだと思います」と見入っていた。

 美香さんは16年の熊本地震の際は「人ごととは思えない」と家族で募金活動をして、宮城から被災地へ送るなど、古里に心寄せてきた。「自動販売機はずっとそこにある。娘の絵とメッセージが道の駅を訪れた町民や県内外の方々に届き、いざという時に命が助かる方へ避難行動を取ってもらえたらうれしい」と話した。

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