高校野球・夏の甲子園1回戦(11日)
○東海大熊本星翔10―7北海(南北海道)●
試合前夜、不安になって、地元の母にLINE(ライン)でメッセージを送った。
「雨、大丈夫?」
東海大熊本星翔のエース右腕・水野右京の地元は熊本県合志(こうし)市。線状降水帯の影響で、10日夜に記録的な大雨が降っていた。
家族の無事が確認でき、ほっとした。地元の友達からも次々と「頑張れよ」とメッセージをもらった。
「よし、やってやろう」。気持ちを奮い立たせ、先発のマウンドに上がった。
緩急を付けたピッチングが持ち味だ。130キロ前後の直球に、100キロ台のチェンジアップ、時折バックスクリーンに球速表示が出ないほど遅いカーブを織り交ぜる。
「大きな曲がりで(打者の)目線を変えられるし、一番は、真っすぐを速く見せられる」
その言葉通り、序盤は緩い球でタイミングをずらし、直球で詰まらせた。
だが、3―0で迎えた五回、その真っすぐを捉えられる。「甲子園の緊張もあって、ボールが指にかかっていなかった。低めに制球できなかった」
この回に5本の長短打を浴びて追いつかれ、五回途中3失点で降板。「投げきりたかった」と悔いは残ったが、勝ち越しは許さずに後半の猛攻につなげた。
中学の時からチームメートだった左翼手の大賀星輝(としき)に誘われ、地元の東海大熊本星翔に進んだ。チームは甲子園で勝ったことがなかった。自身が1年生だった2023年も、夏の甲子園の1回戦で敗れた。
「だから、絶対1勝してやろうっていう気持ちでした。(この試合で)勝った瞬間も、みんなでめちゃくちゃ盛り上がって」
この日、応援団の一部は大雨の影響で甲子園に到着できなかった。実際に九州地方で被害も出ている。
そんな中、出場4回目で手にした春夏通じた甲子園初白星は、地元の人たちを元気づけただろう。【深野麟之介】
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