電気料金が高くなる?政府の原発支援策(2)
「長期脱炭素電源オークションは脱炭素に名を借りた原発優遇制度だ。名前だけ聞くと、再生可能エネルギーを普及させる制度と思う人が多いだろうが、実態は原発のための制度だ。今回の制度改正は、私から見ると官僚の暴走で、驚くべき内容となっている」
こう語るのは大島堅一・龍谷大教授(環境経済学)だ。関西電力が美浜原発(福井県美浜町)で新たな原発の建設やリプレース(建て替え)を検討すると発表したのと歩調を合わせ、政府は原発の建設費や維持費を電気料金に上乗せして支援する仕組み(長期脱炭素電源オークション)を拡充しようとしている。
大島氏は「オークションといっても、経済産業省が選んだ電源が生き残る仕組みだ。原発が再エネと競争するわけではない。他電源との競争ではなく、原発を建てる事業者だけで入札をする。入札に参加するのは原発を持つ大手電力に限られ、1~2社の入札でも、必ずどこかが落札する。これでは本来の競争といえない」と、制度そのものを批判する。
原発持たない新電力の契約者も負担
さらに今回、政府は物価や金利変動のほか、規制強化で原発などの大型電源の建設費や運転維持費が上昇した場合、当初価格の1.5倍を上限に、その費用の9割を電気料金で負担することを求める方針だ。
政府は支援の対象について「出力30万キロワット以上、建設期間が10年超、建設費が1000億円以上の大型電源の新設かリプレース」で、原発に限らないと説明している。
しかし、大島氏は「これだけの条件を満たす大型電源は限られる。事実上、原発しかない」と指摘。「例えば1兆円で落札した原発の建設費が1兆5000億円に上昇した場合、上がった分の9割を電気料金で補塡(ほてん)する仕組みだ。予想外のことが起きても救済される。落札価格が後から上がるなど、普通の企業活動ではありえない。これでは『後出しジャンケン』ではないか」と疑問を呈す。
大島氏が「驚くべき内容」と指摘するのは…
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