今、という言葉になぜか胸がざわつく。世界の壁を越えた私は「今」という感覚があやふやになってきている。二つの世界の時の進み方は全く同じなんだろうか? もしかしたら、元いた私の本当の世界は、既に終わってしまっていて、何をやろうとしてももう手遅れで、壁は閉じてしまっているのではないか? だから、博士もユミダイもあちらの世界の彼人(かのひと)もこんな風な二次元のペタンコな成りになってしまった。
私の頭が勝手にそんなことを想像する。私はその想像を振り払うように首を振る。しっかりしよう。もしすべてが手遅れだったとしても、私にできることはない。私は私のやれることに集中すべきだ。私にできることは壁博士の示唆に乗っかって、私の物語を話すこと。彼人の影響もあって、壁博士のことを疑っている自分の存在を否定できないが、彼は長い間無意識レベルで尊敬してきた、私たちの世界の指導者の一人であることに違いはな…
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