
今年もお盆の時期が巡ってきた。亡くなったご先祖様も現世に帰省するらしい。
死者の霊の乗り物として、キュウリとナスで作る盆飾り「精霊馬(しょうりょううま)」の材料を店先で見かけるようになった。
近年は個性的な作品が交流サイト(SNS)上にお目見えし、新たな風物詩となっている。
キュウリは「馬」、ナスは「牛」
仏壇・仏具の専門店「はせがわ」のウェブサイトによると、「精霊馬」とは、先祖や亡くなった家族が浄土と現世にある自宅を行き来する時に使う乗り物のことだ。

細身のキュウリを馬、ふくよかなナスを牛に見立て、つまようじや割り箸などで4本の足を刺して作るのが代表的だ。
馬は「ご先祖様がはやく戻ってこられるように」、牛は「足の遅い乗り物で、お土産と一緒にゆっくり帰れるように」との願いが込められているという。
といっても、地域や家庭で精霊馬の作り方はさまざまだ。
最近では馬と牛だけではなく、車やバイクなどに見立てて、個性的なアート作品さながらの精霊馬を作る人もいるようだ。
また、文房具大手のトンボ鉛筆は、SNSで自社の鉛筆と消しゴムを活用した精霊馬を披露し、反響を呼んだ。
プラモデルも登場

今年はプラモデルのキットやガラス細工、キャンディーなどの商品も登場した。
プラモデルの精霊馬キットを開発した秋東精工(東京都江戸川区)の商品は、キュウリとナスを本物さながらに再現した。本体に足パーツをはめるための直径3ミリの穴を10カ所設けたところ、一般的なプラモ製品と互換性を持ち、カスタム化を可能にした。
担当者は「キュウリとナスの乗り物を見たとき、不思議な風習だなと思ったが、プラモデルで作ってみたいとイメージがわいてきた。ぜひ自分なりにカスタムして楽しんでほしい」と話す。

SNSには、プラモデルのキットを土台にして、パーツを加えて独自の精霊馬に仕上げた作品も投稿されている。
こうした投稿に「キュウリにブースターを付けてご先祖さまの早期帰宅を願いましょう」と、追慕の念がにじむコメントも寄せられている。【山崎明子】
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