高校野球・夏の甲子園2回戦(13日)
○関東一(東東京)6―1中越(新潟)●
苦難を乗り越えた先の勝利に安堵(あんど)の表情で仲間と顔を見合わせた。
関東一のエース左腕・坂本慎太郎は味方が同点に追いついた直後の五回、連打を浴びて1死二、三塁のピンチを背負った。失点すれば、取り戻しかけた試合の流れを失いかねない。
相手の3番には得意球のカーブを4球続け、二塁へゴロを打たせて本塁タッチアウト。続く4番には直球を続けて裏をかき、最後はチェンジアップで空振り三振に仕留め、その裏の勝ち越しにつなげた。
準優勝した昨夏の甲子園は主に左翼手として全試合に出場し、京都国際との決勝では最後の打者になった。「3年生の夏を終わらせてしまった」。甲子園でのリベンジを誓うと、今夏の東東京大会決勝では完投し、自ら本塁打を放つなど投打でチームをけん引した。
懸ける思いの強さからか、この日は立ち上がりに力みから球が上ずったり、逆球になったり……。暴投で先取点を献上し、五回まで毎回安打を許した。
「冷静になれず、自分の世界に入ってしまっていた」。一人で抑えようとするあまり、周りが見えていなかった。チームメートからの励ましの声でそれに気づくと、徐々に落ち着きを取り戻した。
七回の守備では主将で「4番・遊撃」の越後駿祐が脚のつりを訴え途中交代した。守備の要を失ったが、今度は坂本自身がマウンドで仲間に呼びかけた。「大丈夫、みんなで守ろう」
その後も熱中症の疑いで複数の選手が脚をつるアクシデントに見舞われた。それでも一丸となって守り抜き、坂本は六回以降は無安打に抑え133球で完投。昨夏の雪辱を果たすべく、まずは一歩踏み出した。【下河辺果歩】
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