13日午後9時半ごろ、大阪・関西万博会場の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)に乗り入れる大阪メトロ中央線で電気系統のトラブルがあり、夢洲―長田間の全線で一時運転を見合わせた。中央線は万博会場への唯一の鉄道ルートで、会場最寄りの夢洲駅や会場内では大勢の来場者が足止めされ、一夜を過ごした。日本国際博覧会協会(万博協会)によると、午後9時半時点で会場内には約3万人がいたが、実際に何人が会場で一夜を過ごしたかは不明としている。体調不良を訴える人も多く、14日未明の時点で36人が救急搬送された。
中央線では、4月22日夜にも車両故障が発生して約1時間にわたり運転を見合わせ、万博会場の来場者ら約4000人が一時足止めされた。今回、人工島で行う万博会場へのアクセスの脆弱(ぜいじゃく)さが改めて浮き彫りになった。
大阪メトロは8月13日夜、全線運転見合わせから約40分後の午後10時10分ごろ、夢洲駅と、同駅に隣接するコスモスクエア駅(大阪市住之江区)の間で折り返し運転を始めた。しかし、夢洲駅に帰宅客が殺到したことから、運行を一時中断。午後11時50分ごろになって電車を再び動かし始めたが、駅の混雑は長引いた。
大阪メトロによると、車両に電気を供給する「サードレール」で停電が発生した。レールの継ぎ目を補う部分にあるシートを撤去したところ、送電できるようになったという。メトロは、シートに鉄粉や水分が付着したことが原因とみて詳しく調べている。中央線は14日午前5時25分に全線で運転を再開したが、約4万人に影響が出た。
夢洲駅につながる東ゲート付近では13日深夜になっても電車に乗ることができず、疲れた様子で座り込む人の姿も見られた。
大阪市消防局によると、14日未明までに万博会場や周辺から「体調が悪い」などの119番が40件あり、小さい子どもから80代までの男女36人を救急搬送した。熱中症などの疑いもあり、いずれも軽症という。
コスモスクエア駅でも万博会場からたどり着いた人たちがあふれ、タクシー乗り場にも長蛇の列ができた。東大阪市の主婦、上杉幸美さん(61)は3歳と5歳の孫と義理の娘の計4人で万博を訪れた。13日午後9時に水上ショーを見終えて帰宅しようとしたところ、中央線が止まったことを知った。夢洲駅で乗車できるまでに3時間かかったといい、「孫も『帰られへん』と泣いていた。大変な目に遭った」と疲れ切った表情で話した。
万博協会は14日、会場の準備を整えるため開場時間を通常より1時間遅らせて午前10時にいったん変更。しかし、この日朝から東ゲート前では大勢の来場者が列を作り、実際には午前9時半に開場し、一夜明けても混乱は続いた。【林みづき、面川美栄、高良駿輔】
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