雪風　YUKIKAZE

　太平洋戦争中、沈没する僚艦から海に投げ出された多くの乗員を救い帰還させた実在の駆逐艦「雪風」。冷静沈着に指示を下す寺澤艦長（竹野内豊）、下士官や兵を束ねる早瀬先任伍長（玉木宏）を中心に、若き井上水雷員（奥平大兼）の視点も交えて、レイテ沖海戦など死線を潜り抜けて生き延びた雪風を描いた。無事を祈る寺澤の妻志津（田中麗奈）や早瀬の妹サチ（當真あみ）、苦渋の決断をする伊藤司令長官（中井貴一）らを周囲に配した戦争大作である。

　激しい戦闘場面や戦争の悲惨さを強調した映画ではない。死と隣り合わせの中で、奪われた日常を思いながらも仲間と任務を果たそうとした乗員、犠牲になった人々を忘れまいとするスタンスが本作を貫いている。史実に基づいた物語をよみがえらせた製作陣の意図も明らかだ。