キムズビデオ　映画への夢と情熱の一作

　1980年代半ばから90年代にかけて隆盛を誇ったVHSビデオのレンタルショップは、デジタル時代の到来とともにこの世から消え去っていった。ニューヨークのマンハッタンにあった“キムズビデオ”もその一つ。シネフィルの聖地と呼ばれたこの店は、世界中からかき集めたアート映画や珍品など、海賊版を含むレア度の高い品ぞろえを誇っていた。

　本作は5万5000本にもおよぶマニア垂涎（すいぜん）のコレクションの“その後”の数奇な運命を追ったドキュメンタリーだ。“キムズビデオ”の元オーナーである韓国系移民キム・ヨンマンの謎めいた人物像。膨大なビデオテープがなぜか海を渡り、伊シチリア島のサレミという田舎町に譲渡された経緯。さらに現地を訪れた作り手たちは、希少な映画の価値をまったく理解しない警察署長や政治家らへの突撃取材を敢行する。