高校野球・夏の甲子園3回戦(17日)
○沖縄尚学5―3仙台育英(宮城)●
共にマウンドに立ち続けた両左腕の投球数は計320球に達した。息詰まる投手戦は、終盤の1打席の攻防に勝敗のわずかな分かれ目があった。
無死一、二塁で始まる延長タイブレーク。十回表で無得点に終わった沖縄尚学は窮地に立たされた。一方、仙台育英はその裏、サヨナラ勝ちを決めるべく動いてきた。代打に小技のスペシャリストである背番号「20」の山中琉空(るく)を起用してきた。
「送られたら、負け」。沖縄尚学の捕手・宜野座恵夢(えいむ)は試合の行方を悟ったという。
バントを封じるため、マウンド上の末吉良丞(りょうすけ)に何度も、右打者の山中の内角に切れ込むスライダーを要求した。末吉も同じ気持ちだった。「バントをできるものならやってみろ」と完璧な制球でリードに応えた。
打球は3球ともにファウルゾーンへ。相対した山中は「嫌なところに徹底して投げてきて、思うようにできなかった。2年生なのに末恐ろしい」とスリーバント失敗を嘆く。
その後は満塁となったが、次打者のスクイズを阻止するなどして追い込み、ヒッティングに変えた相手を一直の併殺に仕留めて、無失点で切り抜けた。
沖縄尚学は直後に勝ち越すと、末吉はその裏も140キロ超を計測するなど無尽蔵のスタミナでスコアボードに0を刻んだ。169球を投じた2年生左腕は「緊迫した場面で投げきることができたのは成長だと思う」と冷静に手応えを語った。
投げ合った仙台育英の左腕・吉川陽大も自責点2の好内容だった。両者譲らぬ力投に「吉川君と末吉君の空間になっていた。誰もそこに立ち入ることはできない」と表現したのは敗者の仙台育英・須江航監督だ。
沖縄尚学が大会前に掲げた節目の春夏30勝は、難敵と死力を尽くし合った先にあった。【長宗拓弥】
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