池上彰氏「核武装は本当に安上がりか?」

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 7月の参議院議員選挙中に、「核兵器を持つことは最も安上がり」と主張した候補者がいました。本当に「安上がり」でしょうか。現実的に考えてみると、とてつもなくお金がかかるのです。

候補者の発言に驚く

 参議院議員選挙では、参政党が躍進しました。当選した公認候補者の中には、「核武装が最も安上がり」と発言した人がいました。唯一の戦争被爆国の日本で、こういう発言をする人がいることに驚いた人も多いと思いますが、ここはリアルに、本当に「安上がり」なのか検証しましょう。

 まず日本は「核拡散防止条約」に加盟しています。これは、この条約ができたときに核兵器を持っていた五つの国以外に、核兵器を持つ国を増やさないようにしよう、という世界の約束です。もし日本が核兵器を持とうとすると、この条約から脱退することになります。

 すると世界の国は怒って、核兵器の材料にもなるウランを日本に輸出することを止めるでしょう。日本はウランを輸入して原子力発電所の燃料を作っていますから、ウランが入ってこなくなったら、原子力発電所の運転が止まることになります。

核実験をどこで

 これまで核兵器を開発した国は、いずれも実際に爆発するかどうか核実験をしています。人が住んでいない砂漠がある国や、南太平洋に領土を持つ国は、そこで核実験をしましたが、日本にそんな場所はありませんね。日本は核兵器を作っても実験するところがないのです。

 地下で核実験するといっても、地下水を汚染したり地震を引き起こしたりする恐れがあるので、大規模な反対運動が起きるでしょう。

 イランがイスラエルやアメリカの攻撃を受けたのは、核兵器を作ろうとしているのではないかと疑われたからです。日本が核兵器を持つことを認めない国が、「核兵器を持つ前に攻撃しよう」と、日本を攻撃するかもしれません。核兵器を持とうとすると、かえって日本の安全が守れないのです。

どこに保管する

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