6万人以上が殺され、190万人もが家を追われる。未曽有の惨状は、その土地で築かれた食文化も失われることを意味する。消えゆく郷土料理を記録した「ガザ・キッチン パレスチナ料理をめぐる旅」が今夏出版された。食からガザを知り、残酷な現実に目を向けて――。切なる願いが込められている。
イスラエル軍の絶え間ない空爆で人道危機が続くパレスチナ自治区ガザ地区。住宅や農地の破壊に加え、支援物資の搬入制限で食料不足が深刻化している。「飢餓を軍事利用するのは戦争犯罪だ」。国際社会からの非難をよそに、栄養失調による餓死の急増も伝えられている。
「ジェノサイド(大量虐殺)でガザの生活が消し去られようとしています。でも、具体的にどんな生活が消えるのか、殺される人々が日々何を食べていたのかすら知らないことがショックでした。これこそ自分が学ぶべき本だと、翻訳を決めました」。翻訳を監修した東京大准教授の藤井光さん(45)=現代英語圏文学=が出版の動機を話す。
Comments