高校野球・夏の甲子園準々決勝(19日)
○日大三(西東京)5―3関東一(東東京)●
思い切った早い仕掛けに観客だけでなく、グラウンド上の選手たちも驚いた。両チーム無得点の四回1死一、三塁。日大三の三木有造監督は5番打者に代打を送った。
中軸に代わって登場したのが今夏、西東京大会を含めて初打席の背番号19、豊泉悠斗(3年)だった。
この回の攻撃前に代打起用を告げられていた右打者の心身の準備はできていた。狙い球を緩いカーブに絞って5球目。甘めにきた114キロをしっかり引きつけ、左前に運んだ。
貴重な先制点にも塁上では表情を崩さず、ボールから目を離さないというチームの決め事を貫いた。「全然実感がわかなくて『あっ先制点なんだ』って思いました。でも、怖さはなくて打てる自信はあった」と目の前のプレーに無我夢中だった。
なぜ、日大三ベンチは早めに動いたのか。その背景には豊泉の特殊能力と試合前に描いた筋書きがある。「打撃練習で1球目を芯に当てる。その後は当たらない時もあるが、一振り目の集中力がすごい。ここ一番で絶対にいきたいと思っていた」と三木監督は明かす。前日の練習でも快音を連発しており、関東一のエース左腕の坂本慎太郎に対し、要所でぶつけるべく戦略を練っていた。
さらに、相手は試合巧者の関東一。安定した守りを軸に接戦に強さを見せる。伝統的に打線が自慢の日大三としてはロースコアよりも、点を取り合う展開が理想的だ。この回、豊泉らを生還させる2点適時打で続いた安部翔夢(とむ)も「打ち切って、最後は守る。相手は良い投手がそろっているので打ち勝つしかないと思っていた」と語った。
甲子園で15年ぶりに実現した東京対決。首都でしのぎを削る両雄による一戦は計19安打が飛び交った。「強打の三高」に分があった。【長宗拓弥】
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