18日の米ウクライナ首脳会談について、ウクライナのゼレンスキー大統領は「これまでで最高の会談だった」と歓迎した。ただ毎日新聞のウクライナ人助手が現地で市民の声を聞くと、ロシアとの和平に対し過度な期待はせず、比較的冷静に受け止めていた。
首都キーウの食品業、ビクトルさん(48)は「安全の保証」について「私は信じない。ブダペスト覚書はただの紙切れだった」と突き放した。米露などがウクライナに侵攻しないことを約束した1994年のブダペスト覚書が、その後ロシアによりほごにされ、米国が2022年の侵攻を止められなかった教訓を振り返った。
「ロシアへの制裁を強化するなど圧力をかけ、91年の(独立時の)国境線を要求し、最低でも22年の全面侵攻前の国境に戻すべきだ。ウクライナは無人航空機(ドローン)を増産し、越境攻撃を拡大する必要がある」と語った。
ロシアとウクライナの首脳会談の見通しについてキーウ在住のディエニスさん(32)は「たとえゼレンスキー氏がプーチン露大統領と会っても、何の結果も得られない。プーチン氏は国内で圧力を受けており、侵攻を停止することはできないだろう。ロシアは戦力を結集して大規模な攻撃に備えている」と予想した。
ウクライナ中部ビラツェルクバの理髪師オリャさん(43)は「ゼレンスキー氏は一体どんな精神状態で殺人者と会うことができるのか」とロシアへの怒りを吐き出した。
ゼレンスキー氏はトランプ米大統領とプーチン氏との3者会談が実現した場合、「現実的な交渉」として前線の凍結やウクライナ軍の一部撤退などを含めた何らかの取引を想定しているとみられる。
ボランティア活動で前線付近まで往復することが多いウクライナ中部ビンニツァのビクトリアさん(29)は「我々国民の誰も領土の割譲を認めない。3年半にわたって兵士が守ってきた領土を、どうしてあきらめることができるのか」と語った。
一方、ウクライナのメディアは「過去に例のない会合だった」(ウェブメディア「バベル」)など米国との首脳会談を比較的好意的なトーンで伝えた。【ブリュッセル宮川裕章】
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