消防隊員2人が死亡した大阪・ミナミの雑居ビル火災で、大阪市の横山英幸市長は19日、2人が5階で消火活動をしていた際に天井が崩落した可能性があると明らかにした。この崩落で屋外に避難するための経路がなくなったとみられる。市消防局は近く設ける事故調査委員会で詳しい経緯を調べる。
火災で7階建てと5階建ての雑居ビル2棟が燃え、いずれも浪速消防署に勤務する消防司令の森貴志さん(55)と、消防士の長友光成さん(22)が死亡した。2人は7階建てのビルの6階で倒れているところを別の消防隊員に救助されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。大阪府警が死因の特定を進めている。
横山市長や市消防局などによると、森さんらは建物の内部から消火作業をするため、7階建てビルの1階から上層階に向かった。5階で放水をしている最中に天井部分が崩れ落ち、屋外に退避しようとしていたという。
しかし、崩落した天井に行く手を阻まれて出口にたどり着けなかったことから、6階に移動。黒煙などに巻き込まれ、身動きできなくなったとみられている。5階には別の隊員もいたが、出口に向かうことができ、避難して無事だった。
横山市長は報道陣の取材に「退避していく中で、呼吸の問題で命を落としたというふうに考えられている」と語り、2人が何らかの理由で呼吸困難に陥ったとの見方を示している。
2人が発見されたビルは5、6階付近まで燃えた形跡があったといい、市消防局は天井の崩落との関連を調査する。横山市長は崩落が起きたのとは別の5階建てビルから出火した可能性があると説明。市消防局は1階付近から出火した可能性があるとみて、府警と合同で19日から出火場所や原因を特定するため現場検証を始めた。
火災は道頓堀近くにある大阪市中央区の雑居ビルで18日に発生し、2棟で計約100平方メートルが焼損した。亡くなった2人のほかに消防隊員4人と女性1人が病院に搬送されたが、5人とも命に別条はないという。【大坪菜々美、井手千夏、露木陽介】
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