2025年の夏、いかがお過ごしでしょうか。暑さ対策をしつつ、旅行や帰省の計画を立てている人も多いのでは? 今回は全国各地の「地域トリビア」を厳選して紹介します(随時掲載)。家族や旧友、旅先の人たちとの話題にチェックしてみてください。ふるさとの意外な一面も見えてくるかもしれません。
急カーブをゆっくり走る
1615年に徳川家康の命令によって建てられた名古屋城(名古屋市中区)は、毎年多くの人が訪れる観光名所だ。しかし、かつてそのお堀に線路が敷かれ、電車が走っていたことを知る人は少ないのではないだろうか。
敵が攻め込んでくるのを防ぐため、城の周りにはいくつもの溝(お堀)が築かれた。そのうち最も外側の外堀には1911(明治44)~1976(昭和51)年の約65年間にわたって名鉄瀬戸線の電車が走り、「お堀電車」の愛称で市民らに親しまれてきた。急なカーブがあり、通常の電車よりも遅い時速20キロというゆったりとしたスピードで曲がっていた。
名古屋市の東側にある瀬戸市は古くから「瀬戸物」と呼ばれる茶わんや皿づくりが盛んで、当時の瀬戸線(尾張瀬戸駅―堀川駅)は瀬戸物の輸送路線として活用された。現在の名古屋城正門の南西約1キロの場所にあった堀川駅で降ろされた瀬戸物は船に積み上げられ、堀川を南に下って名古屋港まで運ばれ、貨物船に積み替えられて国内外に輸送されたという。
戦後、日本国内の交通網が徐々に発展し、荷物の輸送手段は船からトラックに移行していった。そうした中、通勤や通学で電車を利用する人々が増え、名古屋市中心部・栄へのアクセス改善を求める声が高まったことなどから、お堀電車は惜しまれながら廃止され、瀬戸線は栄町までの直通運転となった。
かつて外堀に敷かれていた線路は撤去されたが、名古屋城を訪れた際には、外堀に目をやって往時に思いをはせるのもいいかもしれない。
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