
もし身に覚えのない罪で逮捕・起訴され、捜査機関との認識に隔たりがある時。あなたならどう対処しますか。
迎合するのか。それとも信念を曲げずに闘うのか。
実際に起きた二つのケースから、否認や黙秘をすれば保釈が簡単に認められない「人質司法」の問題点を考えます。
【関連記事】
・検察「保釈せず反省」も裁判所は検証なし
「認めさせて」妻からの懇願
「十分無罪のチャンスはある」
2023年の年明け、汚職事件で被告となった男性を弁護人は懸命に励ましていた。
場所は勾留先の東京拘置所。男性は年末年始をここで過ごした。
居室は暖房がきかず、防寒具の差し入れもなかなか認められなかった。
「絶対に無罪」と主張していたはずの男性は気弱になっていた。
「寒さが気力を削っている」。そう弁護人には映った。
男性が逮捕されたのは約2カ月半前。保釈請求をしたが、東京地裁に却下されていた。
「勝てるとしても1年以上かかりますよね」
男性はこのまま無罪主張を続けることが「正解」なのか迷い始めていた。
「認めさせて、保釈させてほしい」
弁護人は男性の妻からは、保釈を最優先するようにとも依頼されていた。
男性と話し合った末、2回目の保釈を請求した。結局、無罪主張は撤回しなかった。
ただ、保釈が認められなければ、闘いの場から降りるとも2人の間で約束した。
「実質的なペナルティー」
被告だった男性は広告大手「ADKホールディングス」前社長、植野伸一氏(71)だ。
東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で東京地検特捜部に逮捕され…
Comments