
「海ひとつ」「山ひとつ」。神輿(みこし)と曳山(ひきやま)が方向転換をする際、「右」や「左」と声かけをするのではなく、地区の両側を挟む海と山で動かす方向を指図する。
石川県輪島市門前町の黒島地区で17~18日、若宮八幡神社の祭礼「黒島天領祭」が開催され、2年ぶりに神輿が地区内を練り歩いた。
杉板の壁と黒瓦の屋根が特徴的な家々が建ち並ぶ黒島地区は、北前船の拠点として栄え、江戸時代から祭りが続いてきた。祭りでは象徴である2台の曳山と共に、江戸中期に寄進されたという神輿が地区内を練り歩く。
しかし、2024年の能登半島地震で神輿が保管されていた蔵が倒壊し、神輿は原形をとどめないほど大破した。同年の祭りは神輿不在で、曳山の巡行のみだった。

神輿は、黒島地区で支援を続けている兵庫県姫路市のボランティア団体を介して同市の大工、福田喜次さんが修復し、復活した。
地区に伝わる天領太鼓の音色とともに、台車に載せられた神輿は2年ぶりに地区内を進んだ。復活を遂げた神輿を見て、手をたたいて喜ぶ人、頭を深々と下げる人……。住民たちは、それぞれの思いで神輿と向き合っているようだった。
18日夕、2日間の日程を終え、祭りは無事終了。氏子総代長の林賢一さん(77)は「盛況のうちに終われた。来年以降も祭りが続いていけるようにしたい」とほっとした表情を見せた。【岩本一希】
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