
△永瀬拓矢九段が今期初戦から「将棋の鬼」ぶりを見せた。終盤の入り口までは▲中村太地八段が勝ちを意識するほどの劣勢だったものの逆転。残り8分で自陣を補強する銀を放つと、勝利を確信したかのように悠然と離席する余裕を見せた。両者の思惑が交錯した緊迫の対局を、上地隆蔵さんが観戦記で読み解いた。
第1譜(1―27)
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7六歩 △3二金 ▲7七角 △3四歩
▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
▲1六歩1 △1四歩1 ▲3八銀 △3三銀3
▲3六歩 △6二銀 ▲3七銀 △6四歩3
▲4六銀 △6三銀1 ▲3五歩 △同 歩4
▲同 銀 △9四歩 ▲7九金2(第1図)
(持ち時間各6時間 消費▲3分△12分)
名人戦終わって思うこと
藤井聡太名人―永瀬拓矢九段の名人戦七番勝負は、藤井名人の4勝1敗(2千日手)で幕を閉じた。いくつか思うことがあったので記す。
一つ目は戦型の偏り。内訳は6局が角換わり、1局が矢倉だった。第4局と第5局は特に象徴的で、千日手局、指し直し局が全て角換わり。正直言って筆者は「もうお腹(なか)いっぱい」と思ってしまった。相掛かり、横歩取り、雁木(がんぎ)など他の相居飛車戦も楽しみたかったというのが率直な感想。
二つ目は、2日目の休憩時間に用意される両対局者の食事について。第2局から軽食ではなく、昼食と同様に本格的なメニューの注文が可能になった。この件は永瀬が強く要望したという。
「無理でしょう~。だって将棋連盟での対局は自由に夕食を選べるのに、…
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