故人の同意なし「再現」 生前の尊厳傷つけるリスク AI故人考/下

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インタビューに答える吉永京子・慶応大大学院特任准教授=東京都千代田区で2025年6月3日、宮本明登撮影
インタビューに答える吉永京子・慶応大大学院特任准教授=東京都千代田区で2025年6月3日、宮本明登撮影

 人工知能(AI)の技術を用いた生成AIの登場で、故人を生前の映像や音声を基に「再現」することが簡単にできるようになってきた。

 こうした「AI故人」は国内外でサービスが相次いで登場。賛否両論を呼んでいる。

 AIの法と倫理が専門の慶応大大学院の吉永京子・特任准教授に課題を聞いた。【聞き手・岡田英】

 生前の動画や音声をAIが学習し、デジタル空間で故人を「再現」する――。「AI故人」はどこまで受け入れられるのか。どんなリスクがあり、どう向き合うべきか。3回連載で専門家の意見を紹介します。
 上:亡くなったおじいちゃんが動き出す? 再現可能性は 松原仁・京都橘大教授
 中:「都合のいい死者」作り上げる装置になる恐れも 中島岳志・東京科学大教授
 下:故人の同意なし「再現」 生前の尊厳傷つけるリスク 吉永京子・慶応大大学院特任准教授

 人工知能(AI)による故人の「再現」は、遺族の癒やしや記憶の継承といったポジティブな側面の一方、倫理的・法的な課題を抱えている。

 倫理面ではまず、故人の同意なしに「再現」が行われている場合が多い。家族や関係者が望んでも、故人の遺志に沿っていない可能性がある。

 さらに、AI故人は生前の映像や音声などのデータに基づく模倣に過ぎず、本人そのものではない。

 例えば、過去の発言を基に再現すると、「ジェンダー平等」を尊重する世の中になっているのに、そうした時代背景を考慮しない発言となり、故人の尊厳やアイデンティティーを傷つけるかもしれない。本人が意図しない人物像が独り歩きするリスクを伴う。

 遺族らが死を受け入れるプロセスを妨げ、現実と向き合うのを難しくする恐れもある。

 死者が死後も社会的に影響を持ち続けることの倫理的妥当性も課題である。

 独裁者やオピニオンリーダーが死後もAI故人によって影響力を持ち続けたら、新たなリーダーの台…

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