
人工知能(AI)が生前の動画や音声を学習し、故人をデジタル空間で「再現」する――。
そんな「AI故人」のサービスが国内外で相次いで登場し、身近になってきた。
賛否両論を呼ぶ故人再現に、どう向き合えばいいか。東京科学大の中島岳志教授に聞いた。【聞き手・岡田英】
生前の動画や音声をAIが学習し、デジタル空間で故人を「再現」する――。「AI故人」はどこまで受け入れられるのか。どんなリスクがあり、どう向き合うべきか。3回連載で専門家の意見を紹介します。
上:亡くなったおじいちゃんが動き出す? 再現可能性は 松原仁・京都橘大教授
中:「都合のいい死者」作り上げる装置になる恐れも 中島岳志・東京科学大教授
下:故人の同意なし「再現」 生前の尊厳傷つけるリスク 吉永京子・慶応大大学院特任准教授
我々は、死者と何らかの形で「対話」しながら生きている。生前には言えなかったことを内心で語りかけるようになったり、関係性がそれまでと変わる「死者との出会い直し」をしたりする。
こうした対話の媒介装置となってきた墓は、少子高齢化が進んで家族のあり方が変わり、家単位での継承が限界にきている。「墓じまい」も相次いでいる。
継承不要な樹木葬や海洋散骨が拡大し、都市部では納骨堂が乱立した。故人を弔う従来の形式が崩れ、多様化している。そこに急に登場したのが「AI故人」だ。
2019年にNHKの番組で、AIが生前の映像データを学習して再現した「AI美空ひばり」が新曲を歌って話題になった。当時は最新技術で、普及はまだ先と思われた。しかし、ここ数年で一気に市場化した。中国では…
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