福岡県は、自治体が主導する形では全国初となる中古電気自動車(EV)のリース事業を開始した。県は使用済みバッテリーの再利用推進に向けて官民組織を発足させており、リース事業を通して効率良くバッテリーを回収し、リユースやリサイクルにつなげる循環モデル構築を狙う。
資源に乏しい日本は、EVバッテリーに使われるリチウムなどのレアメタルを特定の国から輸入しており、経済安全保障上において課題がある。その上、中古EVはバッテリー劣化の不安感から買い手に敬遠され大半が海外に輸出されており、国内にとどめてリユース市場などの拡大につなげる。
県は2024年7月に官民連携組織「GBNet福岡」を立ち上げ、全国に先駆けた資源循環システム「福岡モデル」の構築に取り組んでいる。リース事業は「サステナEV」と名付け、組織メンバーで石油事業などを展開する「新出光」(福岡市)に県がバッテリー性能の検査などを委託して実施する。
初年度登録から5~7年経過したEVを県内の個人か法人に月2万5000~3万5000円で3年間貸し出す。車検や半年ごとの点検がリース代に含まれ、バッテリー性能が低下した場合に無償交換する保証も付く。リースを終えて回収したバッテリーは蓄電池などへ再利用したり、レアメタルを抽出して新たなバッテリーへリサイクルしたりする。
新出光の出光泰典社長は福岡市での記者会見で「安価かつ安心にEVを体験いただける機会を提供できる」と話し、服部誠太郎知事も「事業への参加が持続可能な社会の実現につながる」と期待を込めた。
25年度の貸出台数は30台。バッテリーの診断や走行距離などのデータ収集、アンケートに協力することが申し込み条件となり、応募は専用フォームから。事業全般の問い合わせは県循環型社会推進課(092・643・3381)。【宗岡敬介】
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