福島県浪江町の町民有志が扮(ふん)するご当地ヒーロー集団「なみえアベンジャーズ」が、2013年のB―1グランプリで最高賞を獲得したご当地グルメ「なみえ焼(やき)そば」に使う麺などを原料にしたクラフトビールを商品化した。切れのある黒ビールで、「今の季節にぴったり。ぜひ浪江に来て、地元の食と併せて楽しんで」と呼び掛けている。
なみえアベンジャーズは、焼きそばを通じた町おこし団体「浪江焼麺太国(やきそばたいこく)」を受け継いでいる重機会社社長、前司(ぜんじ)昭博さん(43)が21年、町民有志で結成した。
目的は、東京電力福島第1原発事故による全町避難から復興する浪江の魅力を地域イベントなどを通じて発信すること。ユニークなのは、その手法だ。
太麺のなみえ焼そばを表現した「極太マン」、浪江で製造される水素エネルギーをPRする「水素ウーマン」ら5人でスタート。「覆面をすれば、いろいろな人が恥じらいを捨てて参加できる。自分が浪江でやりたいことを『なんとかマン』で表現してほしい」と門戸を広げた。
町に出向した中央官僚など多彩な人材が加わり、現在は東京に戻った人も含め十数人。前司さんは「今、浪江に住んでいるのは約2000人。町民全員の『ヒーロー化』を目指しています」と力を込める。
2月には地元活性化の一環として、町役場隣のチャレンジショップ「まち・なみ・まるしぇ」内に和風ダイニングバー「なみえアベンジャーズバル」(同町幾世橋)をオープンさせた。クラフトビールは、その目玉商品として企画。なみえ焼そばに使う麺と浪江町のブランドタマネギ「浜の輝(かがやき)」を原料にしており、醸造は農業法人「カトウファーム」が運営する「イエロービアワークス」(福島市)に依頼した。同社の加藤絵美さん(44)は「タマネギの優しい甘みが加わって、飲みやすく仕上がりました」と胸を張る。
なみえアベンジャーズバルで350ミリリットル入りを600円で販売。前司さんは「ビールやアベンジャーズを通じて、人が交流し経済活動が継続的に循環する仕組みをこの町で作っていきたい」と意気込んでいる。【錦織祐一】
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