トマト似のナス科野菜、味はメロン? ペピーノ、厚木の特産目指す

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ペピーノを手にとる東京農業大学農学部の高畑健教授=神奈川県厚木市の同大学で2025年7月17日、佐藤浩撮影 拡大
ペピーノを手にとる東京農業大学農学部の高畑健教授=神奈川県厚木市の同大学で2025年7月17日、佐藤浩撮影

 神奈川県厚木市で特産品になることを目指しているフルーツ「ペピーノ」。まだまだ知名度は低いが、アミノ酸やビタミンが豊富。産官学による「ペピーノプロジェクト」も立ち上がり、その中心人物が、栽培技術の向上などに取り組む高畑健・東京農業大農学部教授(47)だ。ペピーノとの出会いや今後などについて聞いた。【佐藤浩】

 ペピーノは南米原産のナス科の野菜。外見は黄色でトマトに似ているが、レモンと比べるとアスパラギン酸が6倍、グルタミン酸は3倍で、ミカンと比べビタミンCが1・1倍、ベータカロテンは3倍とされる。

 高畑さんとペピーノとの出会いは、大学院生だった約20年前。ホームセンターで「ペピーノ」というラベルの苗を見つけた。「これ、何だろう」。大学の温室で、トマトのように育ててみた。収穫した果実を食べてみると「味が薄いメロンのような味」で、甘さが足りなかった。

 自身の大学院での研究とは異なるものの、調べてみると、ミカンに代わる果物として1980年代にニュージーランドから苗が入ってきたが、国産の果実には甘さが劣り、栽培に手間もかかるので、定着しなかったことが分かった。

 栽培研究が好きだったので、実を甘くする研究を始めた。大学の恩師がトマトを甘くする方法を編み出していた。茎を針金で締め付け、根の成長を抑えるというやり方で、これを応用することにした。

 試行錯誤の末、たどりついたのがネジの緩み止めに使われるリング状のワッシャーの利用。ワッシャーの穴に茎を通し、与える水量も抑えて、糖度を1%以上、上げることに成功した。

 新たな栽培法として2017年に特許を取得できたこともあり「ペピーノ研究はもういいや、と思っていた」と振り返る。相前後して、ペピーノに関するラジオ番組への出演を依頼された。

 番組内で「ペピーノは今後どうなっていきますか」と問われた。

 「もうやりませんと言えず、ついつい『もっと研究して有名にさせます』みたいなことを言っちゃった」。続ける使命感がわいた。

 ワッシャーの枚数を重ねて、茎を締め付ける縦幅を増やすと、実の甘さが増した。その後、大学のブランド構築のプロジェクトにも3年継続して採用された。

 気がつけば、ペピーノの改良が天職に。「厚木市のブランド特産品にして、地域活性化を促進させる」という産官学による「ペピーノプロジェクト」も発進。高畑さんが指導し、現在では市内の農業者約10人が栽培に挑む。市内にはペピーノのケーキなどを扱う洋菓子店やカフェも登場。JA直売所ではジェラートが人気だ。

 「まずは、ケーキなどの加工品でペピーノを知ってもらいたい。厚木市内で高品質な果実として安定生産を目指し、マンゴーのように贈答用果実としても定着させ、南米ペルーに逆輸入させたい」。東京農業大の技術で作られた「農大ペピーノ」、市内の農家が生産した「あつぎペピーノ」が全国に知られるようにと、夢は膨らむ。

人物略歴

高畑健(たかはた・けん)さん

 1978年生まれ、静岡県出身。98年に東京農業大農学部の厚木キャンパス1期生として入学し、大学院博士後期課程を修了。博士(農学)。大学入学時から厚木市に住む。

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