
「主体性のない人間だったんですよね。自分に対する認識が薄くて、柳のように生きていました」
シンガー・ソングライターの柴田聡子さんはそう言って、気恥ずかしそうに笑った。
そんな柴田さんに影響を与えたのが、歌手の安室奈美恵さんやテイラー・スウィフトさんら日米のスターたち。そして、身近にいる愛してやまない存在だった。
詩人、文筆家の顔も
武蔵野美術大在学中、恩師の「柴田は歌うか踊るかだろう」という言葉をきっかけに音楽活動を始めた。
高校時代に好きだった男性デュオ「ゆず」の影響で弾き慣れていたギターを相棒に2012年、アルバム「しばたさとこ島」でデビューした。
浮遊感のある歌声で、フォーク系やポップス音楽の分野で存在感を放つ。
25年にはアルバム「YourFavoriteThings」が全国のCDショップ店員が選ぶ「CDショップ大賞」で「何回でも聴きたい素晴らしい作品」として大賞を受賞した。
ミュージシャンであると同時に詩人としての顔を持つ。
16年に第1詩集「さばーく」を出版し、その年のエルスール財団新人賞(現代詩部門)を受賞した。エッセー集「きれぎれのダイアリー」(23年)や絵本「きょうはやまに」(25年)など文筆家としても活躍する。独特な世界観は歌詞にも反映される。
柴田さんにとって歌詞と詩は似て非なるもの。書くのは「どっちも同じくらい難しい」が、その違いをこう説明する。
「歌詞はポップミュージックというくくりの中でメロディーにハマる言葉を探し、口ずさみながら書いていくので気持ちがスカッとするんですよね。詩は地中に根を張るような、潜っていくようなところがあって言葉の広がりがある分、体力的にキツイ感じはあります」
スターたちに感化され
多彩な活動から想起される創造性とは裏腹に「自分が何を好きなのかもよく分からないし、自分に自信をあんまり持っていなかったんです」とこぼす。
「何が好きか分からない」という一方、安室さんやスウィフトさん、ビヨンセさん好きを公言している。
彼女らの魅力を語る上で、柴田さんが強調するのが主体性だ。例えば、安室さんは…
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