都道府県別の最低賃金(時給)を決める地方の審議会が続く中、改定額の発効時期を例年の10月より遅らせるケースが相次いでいる。秋田県の地方最低賃金審議会は25日、発効を2026年3月31日とするよう秋田労働局長に答申した。厚生労働省によると、発効の越年は現行方式となった02年度以降初めて。異例の遅れに、「先送りが他県にも広がるのでは」と懸念の声が上がる。
最低賃金は、企業が労働者に支払う賃金の下限額。厚労省の審議会は今月4日、全国を3ランクに分け、それぞれ63~64円を今年度の引き上げの目安とした。過去最高の引き上げ幅で、この目安を踏まえて、各都道府県で改定額を巡る審議が続いている。
改定後の最低賃金は例年、地方の審議会で答申後、10月中に発効するのが一般的だ。24年の場合、11月1日とした徳島を除く46都道府県で10月中に発効した。だが、今年は改定額を答申した31都道府県中11県が、11月以降を予定する(26日午後4時半時点)。秋田のほか、群馬26年3月1日(引き上げ額は78円)▽岡山25年12月1日(同65円)▽三重11月21日(同64円)――などだ。
26年3月末の発効となった秋田は、現在の最低賃金が951円と全国最下位だ。今年の審議で、現行額から80円と大幅引き上げを決めた。秋田労働局の担当者は「最下位脱出の狙いもあり高水準の引き上げとなったが、その分、賃金体系の見直しなど準備に時間がかかるという使用者側からの主張があった」と先送りの理由を説明する。他県でも、目安を上回る引き上げの一方、発効日を遅らせたい使用者側の主張を受け入れた形となった。
最低賃金法では、発効時期は定められていない。しかし、発効の遅れは労働者の賃金増の遅れに直結する。また厚労省の審議会が示した目安より下回る可能性がある。北海道大の安部由起子教授(労働経済学)によると、秋田県の最低賃金で働く労働者の25年10月第1週からの年間収入を、25年10月1日発効と26年3月31日発効とで比較すると、半年遅れの80円の引き上げは、目安の64円を24円下回る40円相当の引き上げにとどまるという。
労働者の生活保障に詳しい静岡県立大短期大学部の中沢秀一准教授(社会福祉)は「物価高による生計費の上昇が最低賃金引き上げの理由となっているのに、半年も据え置くことは矛盾している」と批判した。【塩田彩、東海林智、堀菜菜子】
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