規制、客離れ…政治力欲したパチンコ業界 社長の会社は「上意下達」

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東京都内のパチンコ店の窓ガラスに張られていたポスター。立候補予定者の顔写真と名前が大きく刷られている=東京都新宿区で2025年6月14日、春増翔太撮影 拡大
東京都内のパチンコ店の窓ガラスに張られていたポスター。立候補予定者の顔写真と名前が大きく刷られている=東京都新宿区で2025年6月14日、春増翔太撮影

 7月の参院選を巡り、自民党公認候補への投票の見返りにパチンコ店運営会社が従業員に報酬を約束したとされる買収事件で、「デルパラ」(東京都港区)社長の山本昌範容疑者(50)ら同社幹部が公職選挙法違反(買収約束)の疑いで逮捕された。

 パチンコ業界はこの30年間、低迷にあえぐ。7月の参院選で業界初の「組織内候補」を擁立したのは、政治力で低迷する現状を打破したいとの思いが透ける。

 「レジャー白書」や警察庁の統計によると、全国のホール数は2024年末に6700店で、ピークだった1990年代半ばから3分の1に減少。パチンコ参加者(愛好家)は23年に660万人で94年の2割程度に落ち込んだ。

 業界内では「国の規制が厳しくなり、射幸性(ギャンブル性)を落とされて客離れが進んでいる」との不満が漏れる。

 一方でこの2~3年、一部の規制の見直しもあった。自民の有志議員がつくる「遊技産業議員連盟」が「働いてくれた」と受け止める業界関係者がいる。

 そうした中、パチンコ業界は7月の参院選で、自民党公認で阿部恭久氏(66)を擁立した。参院選の比例代表では業界団体や労働組合から組織内候補が出馬している。全国が一つの選挙区となるため、組織票が効果を発揮するとされる。

パチンコ会社社長らによる選挙違反事件の構図 拡大
パチンコ会社社長らによる選挙違反事件の構図

 業界の規制緩和や税制優遇のために政治の力が必要だと力説していた阿部氏。業界は議席を得ようと熱心な選挙活動を繰り広げたが、落選した。

 社長の山本昌範容疑者(50)らが逮捕されたパチンコ店運営会社「デルパラ」について、業界関係者は「押しの強い営業と上意下達の社風で知られている」と話す。別の業界関係者は「自前の選挙は初めてなので慣れていなかったのだろう。業界ではもう組織内候補は出せない」とする。

 今回の選挙違反疑いは、各地の警察が情報をつかみ、本社が所在する東京都を管轄する警視庁と店舗がある7県が合同捜査本部を設置。捜査員約250人態勢という異例の規模で捜査する。今後は各店長や従業員らの立件に向けた捜査を進め、阿部氏の関与があったのかどうかなどを慎重に調べる。

 阿部氏は取材に対し「コンプライアンス(法令順守)やリーガルチェックはしっかりやってきたつもり。非常に残念で遺憾だ」と話した。山本社長とは電話で一度話した程度だとし「指示したらアウトでしょ」と関与を否定した。【長屋美乃里、山崎征克】

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