台湾社会の多様な価値観を漫画を通して伝える漫画展「Colorful―ダイバーシティ in 台湾漫画」が台湾文化センター(東京都港区虎ノ門)で開催されている。ジェンダー▽人権▽多民族――の三つをテーマに台湾の代表的な21作品を紹介している。
国際的な文化交流を促進し、台湾漫画が内包する文化的、社会的な価値を知ってほしいと企画された。台湾を代表する漫画家たちがエンターテインメント性を備えつつ、多元的な台湾社会の今を伝えている。
展示では、作品概要や作家の紹介、漫画の見本がある。作品は中国語だが、QRコードから作品の一部を日本語翻訳で閲覧できるものもある。
ジェンダー(8作品)では、自由な発想で描かれたBL(ボーイズラブ)やGL(ガールズラブ)、結婚や出産の選択、体形に関する葛藤など、さまざまな視点から性とアイデンティティーについて考える作品が並ぶ。
人権(6作品)では、台湾が歩んできた民主化の歴史や言論・出版の自由を勝ち取るために奮闘した人々の歩みなどが描かれ、日本ではあまり知られていない激動の歴史を学ぶことができる。
また多民族(7作品)では、台湾先住民や東南アジアから移住した「新住民」を取り巻く現状など、異なる文化や背景を持つ人々の共生、多様性を尊重する精神を描いている。
22日の開幕式で、日本漫画家協会理事長の里中満智子氏は「台湾漫画には素晴らしい世界が広がっている。絵はもちろんうまいが、それ以上に物語性、表情、セリフの一言一言が実に思いを込めて作られている。だから感動する。もっと日本の読者に読んでもらいたい。世界中が読者ですから、台湾漫画の発展に期待している」と語った。
台湾の漫画家の阮光民氏は「近年台湾でデビューした漫画家たちは、台湾の『色』をさらに生み出していくことができるだろう」と期待感を示した。展示では、阮氏が伝統芸能を巡る現状を描く作品「九天少年」などが紹介されている。
他にも、日本統治時代の旧制台北高校を舞台にした作品「芭蕉の芽」の左萱(さけん)氏、BL作品「小悪魔的愛情病歴」の重花(かさか)氏も出席した。
同展は9月26日まで(土日祝日除く)。入場無料。【鈴木玲子】
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