風邪に似た症状を引き起こすRSウイルスを巡り、徳島県鳴門市は重症化しやすいとされる市内の赤ちゃんに、抗体製剤を無償投与する方針を固めた。RSウイルス感染症に治療薬はなく、抗体製剤は自費投与だと1回四十数万円ほど必要で、子育て世帯には朗報となりそうだ。同様の無償投与は高知県須崎市が6月から全国で初めて実施しており、鳴門市は、それに続く取り組みとなる可能性がある。
厚生労働省のサイトなどによると、RSウイルスは、感染した人のせきやくしゃみなどによる飛まつと、ウイルスが付いた手指や物などを介した接触により感染するとされる。
感染後2~8日の潜伏期間を経て、発熱、鼻汁、せきといった症状が表れ、一部は気管支炎や肺炎を発症することも。年齢を問わず何回も感染するとされ、2歳ぐらいまでにほぼ全員が一度は感染するが、生後6カ月以内の乳児は重症化するリスクが高いとされる。治療薬は存在しないが、基礎疾患を持つ子どもには健康保険を使い、重症化を防ぐ効果が期待できる抗体製剤投与が実施されており、今回は基礎疾患のない新生児・乳児(1歳未満)を対象に、投与の道を開く。
鳴門市は9月3日開会の定例市議会に、事業費901万円を盛り込んだ補正予算案を提案する。原案通り可決された場合、今年4月以降に誕生した市内在住の赤ちゃんを持つ保護者に10月から案内し、11月ごろから市内の医療機関で希望者に注射で投与したい考え。
製薬会社の協力で、1回5万円程度で投与できる見通しが立っており、市医師会からの要望も踏まえ、事業実施に向け補正予算案に盛り込んだ。
27日に発表した泉理彦市長は「新生児、乳児の重症化を予防することはもとより、(発症した際に)看護する保護者も心身経済的負担の軽減にもつながるものだ」と事業の意義を話している。【植松晃一】
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