第96回都市対抗野球大会に出場するNTT西日本(大阪市)の天井一輝(あまい・いっぺい)選手(24)は3月、左手首を骨折する大けがをした。固定のための金属板が埋め込まれたままだが、地道なリハビリやチームのサポートを受けて復帰を果たした。チームとして初戦となる、三菱重工East(横浜市)との28日の開幕試合には強い思いで臨む。
3月下旬にあったオープン戦。左翼の守備中、飛んできたライナー性の打球をどう捕ろうか一瞬迷った。スライディングしながらキャッチしようとして、左手が地面にひっかかり、激痛を感じた。不自然に曲がった手首を見て、余計に痛みが増した。左手首の骨折と靱帯(じんたい)損傷と診断されて手術を受け、約10日間入院した。
手応えの矢先のハプニング
ウエートトレーニングの成果で長打力がアップし、打撃に手応えを感じていただけにショックは大きかった。「情けなさと悔しさで自分に腹が立った」
「いつまでもへこんでいても仕方がない」。気持ちを切り替えた。本大会出場が懸かる5月下旬開幕の近畿2次予選への出場は見送った。しかし、右手だけで素振りをするなど練習は怠らず、対戦チームのデータ分析も買って出た。
天井選手をチームも支えた。トレーナーの草彅翔太さん(25)は、天井選手の左手首の可動域が狭くならないよう、4カ月の間、毎日朝晩、時間をかけて曲げ伸ばしをするなどリハビリを施した。握力回復のためボールを握らせたり、新聞紙を丸めさせたりして、リハビリが単調にならないよう工夫もした。弱気になっている時には「お前がおった方が勝てるよ」と励ました。
地道な積み重ねが奏功し、当初予定より半月ほど早い7月中旬の練習試合で復帰。草彅さんは「回復は早かった。本人の体の強さもあったと思う」と語る。
「ここぞの場面で1本を」
しかし、直後の同月25日、左翼の守備中に捕球しようとしてフェンスに激突し、右足首を強打した。
本大会出場に向けヒヤリとしたが、2週間で完治。8月中旬の練習試合では本塁打含む1試合4安打4打点の活躍を見せた。「度重なるけがに焦っていたが、出場のチャンスをもらえて結果を出せたのは安心した」と振り返る。
昨夏の都市対抗は新人選手ながらスタメン出場し、1、2回戦で計4安打、3打点と活躍した。準々決勝では思い通りのバッティングができず無安打となり、消化不良に終わった。
左手首に固定のための金属プレートが入ったまま本大会に臨むことになるが、心身の準備は万全だ。前回大会優勝の三菱重工Eastとの初戦を控え、「勝つことが一番。自分はバッティングで期待されている。勝負強さを発揮して、ここぞというときに1本を打ちたい」と意気込んでいる。【根本佳奈】
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