第96回都市対抗野球大会(28日・東京ドーム)
大阪市・NTT西日本―横浜市・三菱重工East
大阪市の捕手・辻本勇樹は自分たちの特徴を「守備からのチーム」と話す。それができれば、どんな相手でも好勝負ができるとの自負がある。
真価を発揮したのは0―0で迎えた三回1死一塁の守りだ。ミットを構える辻本の視界に、横浜市の一塁走者の汐月祐太郎がスタートを切る姿が入った。
横浜市の3番・武田健吾を低めの球で空振り三振に仕留め、さらに二塁に低く強く送球した。ワンバウンドしたが、間一髪タッチアウトで「三振ゲッツー」を完成させた。ベテラン右腕・浜崎浩大と組む上で課題として挙げていた序盤をゼロで終え、前回王者との好勝負を演出した。
仙台大から入社7年目。1年目から定位置をつかみ、第一線で活躍し続けている。今年9月に中国で開かれるアジア選手権の社会人日本代表にも選ばれた。
経験がものを言うポジションで、捕手歴は北海道・北海高2年の時からと遅い。遊撃手から未経験だった捕手にコンバートされた。理由は分からないが、当時から「自信があった」という強肩を見込まれたのだろう。
「一日一日、全力でやるだけでした」と泥にまみれた。無我夢中だったが、今では感謝の思いが強い。「内野手のままなら社会人まで野球はできていなかった」。努力は着実に糧になった。
5学年下の弟はプロ野球・中日の辻本倫太郎だ。自身も入社当時はプロを目指していたが、弟に託した。
一発勝負の社会人野球の酸いも甘いも分かってきた29歳。野球も人生も、何が起きるか分からないから面白い。【石川裕士】
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