「山屋になった」娘と登る野口健さん 「一回感情は置く」という心理

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元プロテニスプレーヤーの伊達公子さんとの対談に臨む登山家の野口健さん=東京都渋谷区で2025年7月17日、藤井達也撮影
元プロテニスプレーヤーの伊達公子さんとの対談に臨む登山家の野口健さん=東京都渋谷区で2025年7月17日、藤井達也撮影

 「山屋になったと思いました」。野口健さんは長女の絵子さん(21)のある一言にそう感じたという。伊達公子さんと野口さんの対談の後編は、お互いに命を預けあう父娘登山に話が及んだ。あえて悪天候で訓練を重ねた父娘。自然に向き合う中で見えるものとは――。

前編 同じ断食施設で「強制的にオフ」 伊達公子さんと野口健さんの整え方

しちゃいけない無理

 伊達 ヒマラヤには絵子さんとも行かれてますよね。

 野口 そうなんですよ。僕といつも一緒に登っていた相方が遭難してしまい、娘が1人で行かせたくないと言い出したんです。最近は自分の冒険というより、娘に合わせて行くみたいになっています。4月にヒマラヤに一緒に登って、今年あと二つ6000メートルの山を登りたいと言うんですよ。

 伊達 それは結構いいペースなんですか。

 野口 学生にしてはかなり異例でしょうね。

 伊達 絵子さんがここまで登山に向くと思っていましたか。

 野口 これはわからないですね。小学生の頃はお父さんが何者かわからず、「富士山のゴミの人」と言ってたらしいです。ある頃から、僕がヒマラヤに行くため空港でエスカレーターに乗って「バイバイ」と別れる時、「これが最後になるかもしれない」と思うようになったそうです。

 小4で初めて八ケ岳に一緒に登りました。ふぶいてて途中で山を下りたのですが、その時に僕が「していい無理としちゃいけない無理があって、しちゃいけない無理をすると死んじゃうからね」と話したんです。実はその日、八ケ岳の一つで亡くなった人がいたのを後で知りました。宿に帰ってテレビで遭難のニュースを娘がじーっと見ていたので、いきなり2月に初登山はやり過ぎたかと思ったら、「しちゃいけない無理……」とぼそっと言っていた。その頃から(登山の)スイッチが入り、自分の意思でキリマンジャロ(タンザニア)に行きたいとか言い出しました。

あえて悪天候で訓練

 伊達 それは早いですね。

 野口 小学生ですからね。それで2年間、休みの日に2人で国内合宿を続けました。八ケ岳が多かったですが、晴天より悪天候の日に行きました。雨の中、10時間も縦走するとか。

 伊達 嫌とは言わなかったんですか。

 野口 最初は泣いた時もありました。寒いですからね。でも、人間はピンチを体験させて、生命の危機を感じた時に、本能的にどう自分が生存するか学んでいくと思います。とっさに岩をつかむとか。プチピンチを繰り返すことによって、生命力が養われていくと思うんです。よくあるのは、天気のいい時だけトレーニングをしていて、実際に山で悪天候になるとパニックに陥ることです。だから、あえて悪天候の中で訓練しました。

 伊達 命を守る基本ですね。

 野口 そうなんです。嫌ならやめればいい。でもだんだん泣かなくなって、していい無理のぎりぎりの経験を積み重ねました。遭難するので、ここは間違えちゃいけない。

 絵子が15歳の時に、キリマンジャロに行ったんですよ。ずっと順調だったんですが、最後の山頂直下で、あんなに天気が変わるのかというくらい吹雪になりました。岩陰で吹雪を避けながら、あとは本人がどうするか。残り1時間ちょっとで山頂まで行けないことはない。僕らはしっかり装備を用意していたのでザックからダウンを出してどんどん着込む。それでも相当寒くて、本人の気持ちが切れたらいけないので、あとは絵子の判断だと言いました。本人がじっと考えてから「やる」と言ったら、ガイドは「やるのかー」って感じでした。

 伊達 ガイドはもう帰りたい。

 野口 はい。でも登頂しました。キリマンジャロは富士山と一緒で観光客が多いんですよ。あの時、周りで叫び声をたくさん聞きました。たぶん観光客で、悪天候を経験し…

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