(文春新書・990円)
不安定な多極化の俯瞰と提言
掲題書著者の中野剛志氏といえば、MMT(現代貨幣理論)の理論的支柱だ。
そしてMMTといえば、最近よく聞かれる以下のようなフレーズの論拠でもある。「自前の通貨を発行している日本のような国は、幾ら国債を刷っても財政破綻しないので、どんどん借金して積極財政で景気を良くしましょう」
本来、MMTとは貨幣を、商品ではなく発行者の負債とみる理論で(第2章参照)、それ自体は正しいと評者(藻谷)も考える。同じ第2章で、アベノミクスの異次元金融緩和の根拠たる、貨幣数量説(貨幣は商品であり、その供給を増やせばインフレになるとの説)を一蹴するのも、痛快だ。
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