若島正・評 『帰れない探偵』=柴崎友香・著

Date: Category:カルチャー Views:3 Comment:0

 (講談社・2035円)

「忘れることはなくなること」への対抗

 「今から十年くらいあとの話」

 柴崎友香の新作『帰れない探偵』は、七つのセクションでできている。そのセクションにはそれぞれ題名が付いていて、独立した短篇を集めた連作短篇集のような形式になっているが、ひと続きの長篇小説としても読める。最初に引用したのは、冒頭に置かれた「帰れない探偵」と題するセクションの書き出しで、その文章を読んだ瞬間に、わたしはもうこの本を読み終わるまで、『帰れない探偵』という小説世界から帰れなくなった。

Comments

I want to comment

◎Welcome to participate in the discussion, please express your views and exchange your opinions here.