高さ約7メートル。2階から3階の吹き抜けの壁に、上半身裸で、やはり裸の赤ん坊を抱いた父親の姿が描かれている。父はこの絵画を描いた現代美術家のチェン・フェイさん。腕に抱かれた子どもは、チェンさんの娘である。
チェンさんは1983年、中国・山西省生まれ。現在は北京を拠点に活動する現代美術作家だ。日常生活に残る時間の断片を捉えて再構成し、写実的かつポップに描写する。
チェンさんが「父と子」をテーマに制作するきっかけは、新型コロナウイルス禍の世界が「不寛容だと感じた」ことだ。個人の力があまりにも小さく見え、無力感を抱いた。現実に関わるモチーフを扱うことを空々しく感じていた折、娘が生まれ父となった。多くの時間やエネルギーを娘の成長に向けるようになり、命や生活そのものへの信頼が取り戻せた気がしたという。プロの画家として、私的なテーマで描いていいものか葛藤もあったが…
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